研究・業績

臨床研究について

臨床研究について

呼吸器領域の疾患には、細菌やウイルス感染による呼吸器感染症、喘息やアレルギー疾患、閉塞性肺疾患などの呼吸機能障害、間質性肺炎や自己免疫性疾患などのびまん性肺障害、肺癌や胸腺腫などの悪性疾患、治療によって引き起こされる医原性疾患などがあります。
病態やが確立していない障害や疾患も多く、それを解明して治療に結び付けるような臨床研究を行います。当科の外来、入院で医療を行う患者さまを対象に、カルテから診療経過や検査結果を閲覧し、個人が識別できうる情報を除いた診療情報を用いてデータ解析を行います。
後ろ向き研究ですが、ご自身のデータが観察研究に用いることに同意されない場合には、ご連絡ください。同意されなくても、診療を受けるうえで不利益を受けることはありません。

研究室の紹介

肺がん研究室

概要

「肺がん研究室」では、気管支鏡検査による肺がんの診断、抗がん剤や放射線による肺がんの治療、臨床試験やトランスレーショナルリサーチなど肺がんの研究を行っております。
我々は、「最新の診断技術と治療法の提供」をモットーにして、日々肺がんの診療・研究に研鑽を積んでいます。

特色

  1. 豊富な診療実績

    年間約2500件の抗がん剤治療を行い、その中でも外来での抗がん剤治療が約1800件(74.1%)を占めております。
    外来での抗がん剤治療の割合が高く、外来もしくは短期間入院での化学療法を積極的に行い、肺がん治療と仕事など今までの生活が両立できるよう取り組んでいます。

  2. 最新の医療機器の導入

    気管支鏡検査において医療機器の進歩は目覚ましく、我々は積極的に最新の医療機器を導入することで、以前より苦痛が少なく、短時間の気管支鏡検査を行っています。
    また、最新の肺がん治療では網羅的な遺伝子検査の重要性が高まっていますが、当院の気管支鏡検査ではクライオバイオプシーや超音波気管支鏡(EBUS-TBNA)を用いてより大きな肺組織を採取し、積極的に網羅的遺伝子検査を行っています。

    気管支鏡の外観
    気管支鏡の先端は細く
    4-5mm程度

    気管支鏡でみた気管支の内腔

    クライオバイオプシー
    プローブ先端を急速冷却し肺組織を凍結させて大きな
    組織を採取する

    超音波気管支鏡(EBUS-TBNA)
    気管支鏡先端の超音波装置でリンパ節を確認しリンパ節生検を行う

  3. 最新の肺がん治療の実践

    網羅的遺伝子検査(遺伝子パネル検査)の結果や肺がん患者さまの状態、合併症などを総合的に分析して、個々の肺がん患者さまに対して最適な抗がん剤を選択し治療しています。さらに、がんゲノム連携病院であるためがんゲノム医療も数多く行っています。
    また、新規に承認された抗がん剤や最新の研究成果を積極的に取り入れて治療に活かしています。
    動注化学療法や気管支動脈塞栓術は肺がんの局所制御に有用で、当科の肺がん診療の特色の一つであり数多くの治療実績があります。

    動注化学療法
    カテーテルを用いて気管支動脈から肺がんの病巣に抗がん剤を直接注入し、肺がんの局所制御を
    目指す。(左)動注前:腫瘍濃染あり (右)動注後:気管支動脈塞栓術後

  4. 肺がんの研究

    「肺がん研究室」では、肺がん治療の個別化、特に治療効果や有害事象を事前予測できるバイオマーカーの探索を研究室の中心的テーマとしています。

    • 肺がんにおけるがん抗原特異的自己抗体の同定(科研費基盤C)

    • 肺がん患者における腸内細菌叢の研究

    • 組織切片定量解析イメージングシステムを用いた非小細胞肺癌における腫瘍微小環境多様性の検討

    • 高齢者肺がんにおける治療効果や予後予測因子の検討

    • 気管支鏡に関する研究(低侵襲、効率的な検体採取)

    • CT画像定量解析による薬剤性肺障害リスク評価の検討

    • ePROを用いた免疫関連有害事象マネジメントの研究

    また、治験や多施設共同臨床試験等に積極的に参加し、新規治療薬や治療法の開発に寄与しています。

  5. 充実したスタッフ

    毎週カンファレンスで診療方針を全体で検討し、外来や入院、気管支鏡検査等に従事しております。

    日大板橋病院勤務
    氏名 役職 外来担当日
    清水 哲男 准教授/科長・外来医長 月(新患)、水(再診)
    中川 喜子 准教授/病棟医長 水(再診)
    菅谷 健一 専修指導医 木(新患)、土(再診)
    西澤 司 助手 火、金
    野本 正幸 大学院
    中本 匡治 専修医
    日鼻 涼 専修医
    宮本 一平 癌研有明病院出向中
    中山 龍太 専修医
    花村 瑞季 専修医
    水野 悠 専修医
    日大病院勤務
    氏名 役職 外来担当日
    辻野 一郎 准教授/外来医長 月、水、木、金
    都立豊島病院勤務
    氏名 役職 外来担当日
    淺井 康夫 部長
    田中 良麿 医員

医学生や研修医の皆さまへ

気管支鏡検査や肺がん診療など、随時見学や研修は可能です。我々と一緒に肺がんの診療・研究を究めていきましょう。
お気軽に呼吸器内科医局長までご連絡下さい。
(文責)肺がん研究室 室長:清水 哲男

喘息・アレルギーグループ

  • メンバー

    丸岡秀一郎、伊藤玲子、平沼久人、鹿野壯太郎、岡本真一、山田志保、黒澤雄介、川村倫生

診療
旧第一内科(現在の呼吸器内科学分野、血液膠原病内科学分野)のアレルギー研究室(第5研究室)(室長は現近畿大学名誉教授 中島重徳先生)から続いている歴史ある研究室です。診療は日本大学医学部附属板橋病院の呼吸器内科およびアレルギーセンター、そして心療内科を担当しています。喘息を中心としたアレルギー性呼吸器疾患の診療を多角的視点でアプローチしています。
教育
アレルギー性呼吸器疾患についての医学部学生への講義、実習指導をはじめ、呼吸器専門医、アレルギー専門医取得に向けた研修医、専修医の指導も行っています。また、大学院生に対して臨床および基礎研究指導を行っており、学位取得(医学博士)も可能です。研究会、講習会、学会を通じて、患者、医療従事者への情報発信、アレルギー疾患の啓蒙活動も行っています。
研究

臨床研究では喘息患者におけるマイクロバイオーム研究、口腔内細菌と喘息に関する研究(日本大学歯学部と共同研究)、アプリ(吸入指導、喘息管理)開発、吸入デバイス、スペーサー、マウスピースなどの開発(日本大学工学部、芸術学部との共同研究)、心理社会的要因に伴うdysfunctional breathingの研究(日本語版ナイメーヘン質問票を当科で作成し、実施)などを行っています。また、基礎研究では、免疫ヒト化マウスを用いた難治性喘息モデルの開発(実験動物中央研究所との共同研究)、さまざまなマウス喘息モデル(ダニ、細菌構造物質、真菌、EGPAなど)を用いて喘息の新たな分子病態の解明、ストレス関連喘息の病態解明(マウス)、口腔内細菌構造物質による喘息病態形成メカニズムの解明、喘息病態における新型コロナウイルス受容体ACE2の役割と新規治療薬検証(マウス)などを試みています。

呼吸器感染・炎症グループ

  • メンバー

    水村賢司、大木隆史、氏家麻梨、森田博之、尾添良輔、古庄菜穂、根本陽介

我々の研究室では、間質性肺疾患、COPD、結核/非結核性抗酸菌症に関して基礎・臨床研究の両面から、原因の解明と新たな診断・治療戦略の確立を目指して研究を行っています。
基礎研究では、COPDにおいて、タバコ煙がミトコンドリア損傷を引き起こし、ネクロプトーシスによる肺上皮細胞死を誘導し、気腫性変化に関与することを解明しました(図1)。現在、COPD、肺線維症、肺高血圧症などの難治性呼吸器疾患の新たな治療法の開発のために、間葉系幹細胞に類似する高い増殖能と多分化能を有する脱分化脂肪細胞(DFAT)を用いて、ミトコンドリア移植治療の可能性について検討しています。

図1

臨床研究では、患者様にご協力いただき、実臨床に役立つ研究を常に意識して検討を行っています。COPDにおいては、早期発見のために、一般X線撮影装置を用いて動画を撮影できるデジタルX線動画撮影システム(動態XP)を用いて気腫性病変の検出を検討しています。
また、間質性肺炎においては、慢性線維化性間質性肺炎における新規血中自己抗体探索を試み、近年、早期の線維化を予測する血中バイオマーカーとして抗UBE2T抗体を同定しました(図2. Ujike-Hikichi M et al. Respir Investig 2023)。現在、他のバイオマーカーや様々な間質性肺炎における臨床的意義についても検討しています。 更に、近年のAIのめざましい進化に着目し、AIを用いて胸部CTから間質性肺炎の線維化進行を予測する画像診断支援ツールの開発を、多施設共同で行っています。

図2

呼吸生理病態グループ

  • メンバー

    神津 悠、星 真実子、横田 峻、神野 優介、井戸田 泰典、陳 和夫,赤星 俊樹,吉沢 孝之,永岡 賢一

呼吸生理病態研究室では、日常生活に不可欠な呼吸と睡眠の研究に取り組んでいます。これらは健康維持に極めて重要であり、呼吸障害や睡眠障害が多くの疾患の根源となることから、深い理解と効果的な管理方法の提供が私たちの目標です。
呼吸器内科学分野での経験を踏まえ、我々は日中の管理だけでなく、睡眠中の状態も重視すべきだと考えています。睡眠学の知識を持つことで、より適切な呼吸管理が可能になり、これが皆さんへの重要な“気付き”となると確信しています。

さらに、当研究室では最先端の呼吸管理技術の習得や睡眠時無呼吸症候群治療患者の質の向上を目指す新たな手法に注力しています。これには、呼吸パターンの詳細な分析や睡眠中の身体活動の監視などが含まれます。これらの研究成果を共有し、臨床現場での応用を目指すことが私たちにとって重要です。
私たちの今後の目標は、呼吸と睡眠管理に関する新しい知見の発見と、それを基にした治療法や予防法の開発です。この研究活動を通じて、人々の健康増進への貢献を目指しています。

呼吸生理病態研究室
神津 悠

心身医学グループ

  • メンバー

    医師:丸岡秀一郎、釋 文雄、神津 悠、小寺祥子
    公認心理師:石風呂素子、三輪雅子、内山佳代子、宮村りさ子、赤池あゆみ、三浦寛子

歴史
呼吸器心身症、特に喘息の診療と研究を中心に、旧第一内科 アレルギー研究室(室長は現近畿大学名誉教授 中島重徳先生)から発足した研究班です。故桂戴作先生(元日本大学研究所教授)が喘息における呼吸器心身症の研究を開始され、1968年には板橋病院 呼吸器内科に心身症専門外来、さらに1979年には診療科の1つとして心療内科(初代科長 桂戴作先生)が開設されました。これは大学では、九州大学、東京大学、東北大学についで、4番目、私学では初めての開設で、本邦における呼吸器心身症を開拓してきた伝統ある科です。出身者には、鴨下一郎先生(元環境大臣)、村上正人先生(現国際医療福祉大学教授)などがいらっしゃいます。
診療
日本大学心療内科は、呼吸器内科スタッフが運営しており、内科医の立場から心身症並びにストレス関連疾患の診療に当たっています。担当医は心療内科専門医を持つ内科医で、呼吸器学、アレルギー学、消化器学、プライマリ・ケア学、睡眠学などの専門性も活かしながら、心身両面からの総合的診療を心がけています。また、当科には医学領域の修練を積んだ公認心理師も在籍し、心理療法も行なっています。さらに、禁煙外来、緩和ケア及び各移植チームの活動、医療メディエーターとして救命センター患者家族の対応、アレルギーセンターの診療なども心理師と協働で行っています。
教育
日本大学医学部2年3年では、臨床心理学、行動医学、心身医学の講義、6年では地域医療を通して、全人的医療の実習を担当しています。当科では、内科医のサブスペシャルティとしての心療内科専門医の取得が可能です。また、心理学科の大学院生(日本大学文理学部、ルーテル学院大学)の実習指導も行っています。基礎および臨床研究を行っており、大学院生も受け入れており、学位取得(医学博士)も可能です。
研究
基礎研究では、ストレス関連喘息の病態解明(動物モデル)、免疫ヒト化マウスを用いたストレスモデルの開発などを行っています。臨床研究では、日本語版ナイメーヘン質問票を作成し、dysfunctional breathingに関する研究、ストレスとマイクロバイオーム研究、NIRS(光トポグラフィ技術)を活用した心身症研究(日本大学生産工学部、歯学部と共同研究)を行っています。

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